2014年11月20日木曜日

【開催レポート】雪対策×ITマッチングワークショップ ~全体編

大変お待たせをしました。9月に開催したハッカソン「雪対策×ITマッチングワークショップ」の開催レポートを掲載いたします。今回は全体の様子をご紹介。以後、各チームの追っかけレポートも連載でお届けいたします。

青森県では、昨年来から県主催のハッカソン「地域課題ITソリューション提案ワークショップ」として実施してきました。今回は、「雪対策」をテーマで、3日間にわたり行いました。

(1)概要
▼日時:2013年9月12日(金)13:00~9月14日(日)17:00
▼場所:青森公立大学

▼主催:青森県 
▼運営:株式会社サン・コンピュータ

▼企画:株式会社CCL
▼協力:Fandroid EAST JAPAN青森県支部

昨年度から通じて3度目となる本イベント。今年度は、「ITビジネスアイデア開発支援事業」との連携で、同事業を受託する株式会社サン・コンピュータから7名のスタッフが、運営メンバーとして各チームに密着しながら、本イベントの運営を支えました。

開会にあたり青森県商工労働部新産業創造課
鈴木章文課長からご挨拶をいただきました

(2)インプットワーク
今回は、雪対策に関係する分野から、地元自治体の雪対策の担当課や除雪を行っている建設業者の方々にもお集まりいただき、彼らに向けてITのエンジニアたちがインタビューを行い、ニーズを引き出すワークを行いました。

会場は青森公立大学の交流ホール
ファッションショーもできる多目的ホールです

今回のハッカソン参加チームは、地元青森県内や仙台から参加したIT企業など計6チームでしたが、初日のワークでは人数が多かったため、急遽各チームから一人ずつ集めてアイデアソンのみの7チーム目を編成。

ここでは、7チーム目の参加者のみなさんの様子を追いながら、アイデア出しのワークの様子を紹介します。

メンバーは、株式会社ビジネスサービスから松田さん、株式会社サン・コンピュータから木下さん、アンデックス株式会社から高橋さん、株式会社ジュライから江利山さん、青森大学から澤田さん、そしてインプットワークで雪対策についてインタビューをさせていただく志田建設の山田さんにお集まりいただきました。

グループに分かれてのアイデアワーク


インタビューでは、メンバーの方々が普段から思っていた住民の立場からの疑問や、それに対する業者の立場から住民の方々に対してのお願いなどの話題が上がりました。だんだんとチーム内の雰囲気も解れてきて、本音も交じりながらのお話に熱が入り、その中から課題点などをピックアップしました。

このチームが注目した問題点は、業者の方々からの「除雪車などを使用した際の書類の提出が面倒」という点と、住民側からの「自宅の庭の雪も一緒に除雪車で持って行ってほしい」という点の2つでした。この問題点から検討すべきソリューションのテーマを「書類のIT化・電子化」そして「除排雪車の通知」に絞りました。

(3)アイデアソン
アイデアソンでは、インプットワークから抽出したテーマに沿って、ブレインライティングシートを使って、以下のワークを行いました。

① 1人1枚のシートに何分以内に3つアイデアを書き
② 隣の人にそのシートを渡し
③ 次のマスに先ほどと同様にアイデアを書き
④ 6回目のマスが埋まるまで繰り返す

このワークは、初めに思い浮かぶものを出し切ったあとが勝負どころ。このチームも、最後のマスに近づくにつれて、頭を絞りながらシートに記入していました。

ブレインラインティングシート。最後に頭を絞り切れるか?

その後、スピードストーミングによるペアブレストを実施。このワークでは、2人1組のペアを組んで、お互いのアイデアをもとに5分程度のディスカッションを行い、終わったら別な相手とペアを組んで、同じように5分程度ディスカッションをするという動きを繰り返します。

これにより、他人からアイデアをもらったり、相手に話をしたりすることで自分のアイデアのイメージを具体化させることができます。

こうして出たアイデアをもとに、アイデアシートを作成。1つのアイデアを、A4の1枚のシートに書き込み、アイデアの概要をまとめます。

今回のアイデア出しのワークは、書く、書く、書く!

シート類も、マイプロ、マンダラート、ヒアリングシート、アイデアシートなどなど

サン・コンピュータの運営スタッフも一緒に書きました

アイデアシート。アイデアの概要を1枚にまとめます

書きあがったアイデアシートは、参加者全員で閲覧をして、発展可能性がある、面白いアイデアに星印を付けて評価を行います。多くの星印を集めたアイデアは、わかりやすさやパッと見の面白さがあるため、ハッカソンで扱う題材の候補になります。

このチームでは、青森大学の澤田さんが書いた除排雪車の通知についてのアイデアが星の獲得数で上位に入り、みなさんの前で発表していただきました。澤田さんは、県外で開催されるアイデアソンやハッカソンにも、日頃から積極的に参加をしている意欲ある学生さんで、この日も活発にアイデアを出されていました。

青森大学2年生の澤田さんから、アイデアの披露

また、今回は開発で使えるツールとして、株式会社NTTドコモと日本気象株式会社の2社からAPIをご提供いただきました。NTTドコモからは、山本様に青森までお越しをいただき、同社のAPIについて解説を行っていただきました。

NTTドコモ山本様から提供APIの説明

初日の夜は交流会も開催。翌日のハッカソンに備えて、英気を養いました。

交流会の様子

 参加者同士の交流もこのイベントの醍醐味です

昨年に続きメンターとしてご参加いただいた小泉勝四郎さんを囲んで


(3)試作品開発ワーク(ハッカソン)

2日目は同大学の食堂へ場所を移して、ハッカソンが始まります。会場のネットワーク設定は、新時代ITビジネス研究会のクラウド部会でもご活躍のヘプタゴンの立花さんにサポートいただきました。

2日目の会場は青森公立大学の食堂をお借りしました

立花さんには早朝からネットワーク構築に尽力いただきました
おかげさまで快適な環境に。ありがとうございます!

冒頭は、ハッカソンやこの日行われる中間発表についての説明を行いました。

中間発表についての説明 

続いて、今回ハッカソンのメンターとして参加されているサンキュロットインフォの小泉さんからハッカソンの心得についてお話をしていただきました。

小泉さんからはハッカソンのポイントを明快に示していただきました

目指すはここ!

その後、各チームでアイデアのブラッシュアップや開発作業が行われていきます。

15時からは中間発表。

今回の中間発表では、全員の前で発表をするスタイルをやめ、プレゼン5分・質疑5分で、各テーブルを代表者が回り、質問やアイデアを持ち帰る形式にしました。

これだと、かかる時間が同じでも、少人数での議論となるため声があがりやすいほか、プレゼンターは他チームのテーブルを回りながら何度もプレゼンを行うことで、自分たちの考え方を整理することができます。プレゼンする側と聞く側の距離がぐっと近くなるので、質疑応答も盛り上がっていたように感じました。

中間発表の様子。スピーディかつ濃い議論に 

中間発表後は終日ハッカソンだったので、代表メンバーがツッコミ、アイデアなどをチーム全体に報告した後は、明日の成果発表に向けての作戦会議や作業などを集中して行っている様子でした。
また、記録係として各チームにお邪魔しているスタッフも、2日目となれば参加者の方と打ち解けているように感じました。

サン・コンピュータからは開発メンバーもチームで参加
同チームは運営スタッフ川守田が担当

こちらは仙台から参加のアンデックス株式会社
毎回参加の同チームには、スタッフの山田が張り付き

株式会社ビジネスサービスのみなさん
こちらは熱心に議論に聞き入る運営スタッフ小西

地元青森から参加のジュライのみなさん
運営スタッフ風間がこのチームの担当に

こちらは今回唯一の混成チーム
運営スタッフ中里が追っかけます 

こちらも昨年からフル参加のアイティ・コワーク
運営スタッフ相馬がお手伝いに入りました

2日目は、食堂から見える晴れ渡ったきれいな景色と、開放感のある場所のおかげもあってか、各チーム集中しながらも前日よりは雰囲気がほぐれている印象でした。

食堂でのハッカソン作業は一度18:00で終了しましたが、国際交流ハウスの一室を作業場として開放。深夜、明け方まで作業を続けたチームや、内容をはじめから作りなおすチームなど、それぞれが持てる時間を活用しながら、開発に集中していました。明けた最終日は静かな雰囲気で、集中している様子がひしひしと伝わってきました。

夜も開発が続きます 

画面もできあがってきました 

県庁有志から恒例の差し入れが! 
杉山さん、池田さん、いつもありがとうございます

ハイペースで飲み干すチームも

最終日は、午後の成果発表に向けて急ピッチでの追い込みへ。開発のほかにプレゼン準備も追い込みです。今回はスキット(寸劇)を活用したユーザー体験の説明も呼びかけてられており、最後の発表も力を入れる大きなポイントです。

会場の様子。各チーム、黙々と集中しています

サン・コンピュータ。追い込みの緊張感の中、開発に集中!

アンデックスはアプリ開発の研修生たち。初心者集団でどこまでいけるか!?

ビジネスサービス。実機確認と発表の準備を着々と

 ジュライのみなさんは笑顔が。日曜日なのでお子さんも参加

混成チーム。ハッカソン経験豊富な青森大学の小久保先生が駆けつけています 

アイティコワークは触沢社長が登場。メンバーの表情に緊張が漂います


(4)成果発表会

成果発表会では、以下の順番で各チームが発表を行いました。
1 アンデックス株式会社
2 株式会社サン・コンピュータ
3 ジュライ
4 株式会社ビジネスサービス
5 混成チーム
6 アイティコワークだぜ

審査員には、今回主催をされた青森県商工労働部新産業創造課の鈴木章文課長のほか、青森市役所の職員の方々、会場をご提供いただいた青森公立大学の木暮先生、メンターの小泉さんなどにお入りいただきました。

また、急遽、賞品を差し入れいただいたため、投票も行われることになりました。もっと多く票を獲得したチームには、青森の味覚セットが贈られます。

 急遽お寄せいただいた商品。ありがとうございます!

各チームの個性ある発表が行われ、寸劇などで成果物の効果をアピールチームが複数ありました。また、GPSを利用したアプリのデモンストレーションで参加者がGPSを持って外に向かって走り出すパフォーマンスもあり、会場内はとても盛り上がっていました。

混成チームの発表の様子

そして審査員投票で、もっとも多く票を獲得したのは「株式会社ビジネスサービス」の皆さんでした。賞品の青森味覚セットを手にとても喜んでいらっしゃいました。おめでとうございます。

ビジネスサービスのみなさん、おめでとうございます!

(5)成果物

各チームの成果物については、それぞれ、以下のとおりとなっています。

1 アンデックス株式会社
サービス名:ユキダス
内容:スマートフォンを使った、ドライブレコーダーアプリ。地図情報、写真、情報の送受信の機能を活用した道路状況確認アプリであり、地図画面に危険な道の情報が表示されている。その他に、その場所の道路状況を写真で確認することが出来る。そのことにより、安全な道の選択、危険な道の回避をすることができ、県民の安全な生活をサポートする。一般車両(車通勤する人、人が多く行動する時間帯に車を運転する人)、運送業、緊急車両(消防車、救急車、パトカー、などの緊急車両)、歩行者などが利用者となる。

2 株式会社サン・コンピュータ
サービス名:はわわ!ここは危険な道なのです!
内容:地域住民からスマホでデータを投稿してもらおうというアプリ。データはサーバーで集計され、投稿内容別に色分け表示、web、スマホでマップ上に公開。雪対策以外の用途でも利用でき、通年使用が可能。メインターゲットは地域住民。住民側のメリットは、最新の道路状況が分かる、投稿画像で状況が一目でわかるという点にあり、行政側のメリットは、カメラが設置されていない場所の道路状況が分かるといった点にある。

3 ジュライ
サービス名:除雪作業報告システム
内容:スマホに作業開始時間、終了時間、位置情報などの作業情報をサーバーに送信する車載アプリで、サーバーに保存された作業情報を編集できる報告書フォームがあります。また、位置情報から地図上に除雪機械の位置を表示して除雪作業状況も配信するサービスです。主に行政向けのシステムで、期待される効果としては除雪作業者の事務的作業の短縮・軽減、行政側の作業状況の把握と事務作業の効率化、市民に対して除雪作業の可視化ができます。

4 株式会社ビジネスサービス
サービス名:ユキホーアオモリ(由来は雪の報告)
内容:除雪の出動判断を効率的に行い、自治体⇔業者の連絡を自動化することで、ムダを省いて効率的な除雪を実現。現場のパトロール隊がスマホやタブレットから集めた青森市各エリアの積雪状況から、除雪の必要性が一目で分かるインターフェースになっていて、市内のどのエリアに今晩の除雪が必要か、判断しやすくなっている。さらに、除雪が必要だと判断したエリアの業者へ、ボタン一つでメール/FAXを自動送信。受信した業者は、今晩出動できるか、重機を何台出せるかを返信することで、重機の稼働・不足状況一覧の画面がアップされる。市役所担当者が一番大変な「出動の判断~業者への連絡」を効率化することで、人手がかかる業務フローの改善をはかることができる。

5 混成チーム
サービス名:ジョセツ・ジョースター
内容:除雪車が来るかどうかを通知するアプリ。行政がWeb上で「除雪業者」「除雪地域」「除雪開始時間」「除雪終了時間」を入力。サーバを経由して除雪情報がユーザーに送られます。ユーザーが事前に除雪車が来るか来ないか、来るとしたら何時頃に来るのかを通知。ユーザーが心の準備ができるようし、行政や業者に寄せられる苦情を減らす。

6 アイティコワークだぜ
サービス名:ゆきサポ
内容:困っている人の見える化と、社会的弱者への積極的な支援を目的に、看・老・怪我等サポートが必要な人とボランティアを繋げるサービス。除雪ボランティアに興味のある人、高齢者・要介護者・障害のある方等の社会的立場の弱い人、行政の除雪担当者のそれぞれをターゲットとし、ボランティア参加へのきかっけづくりや社会的に弱い立場にいる人々への積極的な支援を可能とする。行政で除雪道具の貸出を行っているが、認知度が低く予算がとれていない地域があるため、除雪道具貸出の実績、需要を増やし、次年度の予算を取りやすくすることに貢献したい。


※各チームの成果物の発表内容や参加の様子は、後日、チーム毎にレポートを掲載いたします。


(6)サポーター・メンターコメント

中間発表後に、各チームのサポーターやメンターとして参加しただいた5名の方に今回のハッカソンについてコメントを頂きました。

■サンキュロットインフォ 小泉勝四郎様
皆リアルタイムの話しかしていなかった印象です。いろんな人がいるのでもっと多様性が欲しかったかなと思います。アイデアとしては、混成チームは雪が多く降る地域出身の人が多かったので、雪対策についてリアリティを持って進められて、やることが明確だったのが良かったと思います。

■株式会社ヘプタゴン 立花拓也様
課題がはっきりしすぎていて、皆同じようなテーマになりがちだと思いました。実用的なのはもちろんいいのですが、各チーム似たようなアイデアになっていた印象です。前回のハッカソンにも参加しましたが、前回に比べると参加者の皆さんが集中して作業しているので、真剣さが伝わってきます。夕食後スタッフの方が、ブレイン・ストーミングをやっていて楽しそうな雰囲気だったので、会場内でもそういう要素がうまく取り入れられればいいと思います。

■Fandroid KANSAIメンバー
全体的に見て遊びがないかな、真面目だなという感じを受けました。良かったと思うのはAチームで、ここは他のチームができていなかったデータの見える化をしていました。見え方も工夫されていたし、完成度が高いと思いました。また、雪質が大事という話をしたのもこのチームだけでした。

■アンデックス株式会社 鈴木宏輔様
ハッカソンはお祭りイベントだと思っていましたが、今回の青森は深いというか、お仕事みたいにやっている印象でした。ビジネスモデルを考えたり、今後を考えたり、ちょっと固いかなとも思います。イベントなのでもっと突飛な意見が出てもいいんじゃないかなと思いました。最初に行政や業者の方の話を聞いているので、各チームのアイデアがどうしても行政・業者寄りになってしまっているのが気になったので、例えば除雪しないとどのくらい困るのかなど、もっといろんな話が聞きたかったなと思います。


今回のハッカソンは、運営担当のサン・コンピュータのITビジネスアイデア開発支援事業のスタッフが、当日の取材・レポートの作成も行いました。今回の記事の素材集めは、運営スタッフのサン・コンピュータ宮川が担当しました。

宮川の感想も以下、ご紹介します。
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ハッカソンの場に立ち会うのが今回初めてで、実際どんな様子なのか、どういう風に記録すればいいのかなど、始まる前にはいろいろと考えていましたが、未知のイベントだったので期待もありました。最初、アイデアソンで即席チームにお邪魔させてもらいましたが、スタッフ側としてうまく進めることができず、反省点が多かったです。

2日目以降は、チームごとの盛り上がり方の違いを発見したり、サポーターの方にいろいろお話をうかがったりと、いろいろ吸収するものばかりでした。

そして、皆さんプレゼンの資料もとても分かりやすく作っていらっしゃって参考ンしたいと思いました。個人的にはビジネスサービスさんのユキホーアオモリのロゴがとてもかわいくて好きでした。
また、サポーターの方々にお話をうかがった中で、もっと遊びや多様性が欲しいという意見が気になったので、今後の課題としてそういう雰囲気づくりの手伝いができるほどにイベントコーディネーターとして成長したいと思います。
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ご参加いただいたみなさま、企画運営そして告知にご協力いただいたみなさま、メンター・サポーターのみなさま、審査員としてご参加いただいたみなさま、会場ご提供いただいた青森公立大学のみなさま、主催の青森県のみなさま、誠にありがとうございました。

次のレポートでは、各チームの動きをご紹介いたします。どうぞお楽しみに。

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